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2025.12.19
第42回(2025年12月14日)開催報告
全体報告
12月14日に開催された第42回蔵の街校の学習者は、小学生クラス4名、中高生クラス2名、社会人クラス17名の計23名でした。スタッフは3クラス合わせて18名。この日は学習者4名とスタッフ1名が新たに参加し、今までと同様 楽しい学びと交流ができました。ただし、今回も特に社会人クラスのスタッフ不足のため、日本語学習入門期の学習者6名(全員バングラデシュ出身)については、経験のある社会人スタッフ1名が対応しました。また、中高生スタッフ1名が社会人クラスの応援に入りました。なお、小学生クラスもスタッフが少なかったため、社会人スタッフ1名が応援に行きました。こうした調整を行った結果、一部を除き、基本的に学習者1名にスタッフ1名という学習活動が可能となりました。スタッフ数が足りない時にどう対応するかが最近の悩ましい課題となっています。
朝のミーティングでは、まず初参加の高校生スタッフFさんから自己紹介がありました。次に、司会進行の私から、12月28日(日)10時~12時に1階の大交流室で開かれる交流会(参加無料)の案内をして、クラスごとにスタッフと学習者で内容について少し考えていただくようお願いしました。最後に、Tさんの鍵盤ハーモニカの伴奏で、11月の歌(4曲目)「線路は続くよ どこまでも」の1番をみんなで手拍子をしながら、楽しく歌いました。
ふりかえりのミーティングでは、初参加の外国人学習者4名から日本語による自己紹介がありました。みなさん頑張っていました。パチパチパチです!!次に、中学2年Tさんと社会人学習者の方の漢詩朗読があり、母語話者の中国語の響きとリズムを味わいました。そのあと、小学生と中高生クラスのスタッフから交流会の内容についての中間報告がありました。詳細は内緒です。お楽しみに!最後にこの日の締めくくりとして、Tさんの音頭で「線路は続くよ どこまでも」の2番を歌いました。2番の歌詞は「せんろは うたうよ いつまでも れっしゃのひびきを おいかけて リズムにあわせて ぼくたちも たのしいたびのゆめ うたおうよ ランラ ランラ ラン・・・」です。
11月の蔵の街校でTさんが説明されましたが、「線路は続くよ どこまでも」の原曲は、アメリカ民謡です。英語原文のタイトルは、I‘ve Been Working on the Railroadです。主語のIは線路の工事をしている人をさし、実際の歌詞もこの文で始まります。私はこの原文が「線路」の視点から日本語に翻訳されて生まれ変わった気がします(訳詞 佐木敏氏)。視点が特定の人から私たちになったからです。このため、みんなで手をたたいたり手をつないだりしながら、よりいっそう明るく楽しく歌いやすくなったのではないでしょうか。英語原文には、日本語訳詞の2番にある「せんろは うたうよ・・・」のような歌詞や1番と2番にある「ランラ ランラ ラン・・・」のようなスキャットがありません。このあたりも訳詞による創作のすばらしさと考えます。蔵の街校で歌うにふさわしい歌だったと思います。今回がこの歌の(ひとまずの)歌い仕舞いかと思うとちょっぴりさみしい思いになりました。5曲目の歌は、次回の21日(日)にお披露目の予定です。どうぞお楽しみに!
今回の開催報告には写真が11枚ありますが、ホームぺージの見やすさ・分かりやすさを高める工夫をしました。最初の4枚がふりかえりの全体ミーティング、次の4枚が小学生クラス、(今回は中高生クラスの写真がなく、スミマセン!)、最後の3枚が社会人クラスの写真となっています。全体報告、小学生クラス、社会人クラスの報告文の直後にそれぞれの写真を掲載していただました。今後も無理のない範囲で少しずつ改善できればと思います。よろしくお願いします。(S)
小学生クラス
今回の参加は4人でした!初めはみんなで学校の宿題をしました。それぞれ何ページおわす!、今日は〇〇やる!と目標がしっかりあって感心!
私たちは算数や国語、文字を書く練習などサポートしました。一つの机でみんなでやっていたので途中でおしゃべりをしたり、教えあったりもしました。Sくんは集中力が抜群で、なんと、10ページもあった宿題を終わらせました!!
そのあとは、12月28日に行われる交流会に向けて小学生の部では何をやるのかみんなで考えました。小学生の部では、今年一年この自主夜間中学で楽しかったことを大きな模造紙にみんなでまとめて発表します!お楽しみに。
中高生クラス
中高生クラスの2名は、中学2年Tさん(中国)、母国で10年の学修を終えて来日したBさん(ネパール)でした。以下、それぞれ受け持ったスタッフからの報告です。(S)〇 今日のTくんとのセッションは漢詩三首。中国にいる時に、「春暁」(孟浩然)は小2、 「黄鶴楼送孟浩然之広陵」(李白)は小3で習ったとのこと。
漢詩の構成(起承転結)の妙、対句表現の重層性を味わいました。日本でも中国でも人口に膾炙した名詩の持つ高い芸術性には幾度読んでも舌を巻きます。
帰りの会では、社会人クラスの中国人学習者と一緒に、中国語での漢詩朗読を披露してもらいました。(T.Y)
〇 今回はネパールから来たBさんと、日本語を勉強しました。手元のノートを見せてもらうと、これまで学んだことを自分なりに整理しながらまとめ直している様子。そのような成果もあってか、今回も着々と進み、ひらがなとカタカナがほとんど完璧になりました!後半は栃女生も応援に入って、栃木県名物の「ぎょうざ」や、日本ならではの「だいみょう」などの、意味を理解しようとしたり、声に出して読んだりすることができました。交流会に向けても、ますます学びを加速させていけますよう!(K)
社会人クラス
学習者は17名 全体の支援者は18名バングラデシュ人6名、パキスタン人2名、スリランカ人2名、中国人2名、ネパール人2名、日本人1名、インド人1名、インドネシア1名 (K)
〇 今回は女子高生が2名参加してくれた。1名は初参加だ。部活で蔵の街自主夜間中学を知り興味を持ち参加を決めたと吐露してくれた。若い人の参加は全体に活気を与えてくれるから大賛成だ。どんどん若者が自主夜間中学のような活動に目を向けてくれれば社会的に認知度が増してくるに違いないと思った。
全体のミーティングの後、Tさんの鍵盤ハーモニカ演奏で「せんろはつづくよどこまでものをこえやまこえたにこえて」の合唱で盛り上がった。やはりTさんのハーモニカ演奏はみんなの心をつなぐ接着剤のような気がする。歌詞は分からなくても手を叩きおもちゃの楽器を鳴らし体を揺らしながらの合唱に、自主夜間中学の一体感を捉えることができた。いろんな人々が集まり独特のエネルギーを生み出して更なる進化を遂げるのではと膨らませてみた。
いつものようにKさんの席に歩み寄りルーティーンの握手をする。「今日も来ました」というような無言の力を込めて握り返してくれた。さすがに寒いのか頭からすっぽり毛糸の帽子をかぶってきた。最近までかなり薄着で来ていたのだが12月の寒さに耐えられなかったのかもと読んだ。
「あたたかそうですね」と掛けると「さむいです」と身を丸めた。Kさんの国では冬があるのかなと単純に思った。たとえあったとしてもマイナスにはならないのかもと深読みをする。KさんはTさんの学習支援を受けている。Tさんは前回休んだので最初からかなり熱を入れているように映った。漢字の練習から始まった。
「日、月、火、水、木、金、土、時、分、雨、牛肉、場所、平日、祝日、学校
生きる、高い、安い、午前、午後」とKさんはノートに大きな字ではっきりと書きこんだ。
「Kさんはタミール語でも書いているんですよ。どんな意味か忘れないように」
学習が終わるころに「それでは、宿題を出しますからこの字を練習してきてください」といくつかの漢字を書いてやっていた。
Tさんはわが子を見つめるようにやさしい眼差しを向けて支援していた。
30代の後半位の男女がスーッと教室に入ってきた。椅子に座りまわりの様子を窺うようにきょろきょろと落ち着きがなかった。近づいて声をかけてみた。どうやら初めて来てくれたのが分かったので、メモ帳に名前を書いてもらった。
女性から書いてくれた。カタカナで書いてくれた。日本語はあまり分からない様子だった。男性も書いてくれたがかなり曲がっていて読みづらい文字だった。男性はあまり言葉が通じなかったので女性が通訳するようにカバーしてくれた。ネパールから来てO町にある大手のH電気会社で働いていると日本語でゆっくり答えてくれた。
学習が始まって誰に支援をしてもらうか振り返ったらIさんとUさんが後ろの端で佇んでいた。まだ誰を支援するか決まってないというので、初めて来たネパール人の支援をお願いした。
Iさんは女性を、Uさんは男性を支援することになった。2人とも最初躊躇していたがだんだん溶けこんでいった。Iさんは前に出て自己紹介の練習から初めていた。「わたしの名まえはJです。ネパールからきました」
Tさんが集団の支援をしていたときに見た光景だ。頭を下げながら丁寧なあいさつの練習に見とれてしまった。
Uさんは英語を駆使して会話や学習に取り組んでいた。
「サガラマタはネパールにあります。エベレストはネパール語でサガルマタと言います。わたしの国はネパールです」
ネパール語でエベレストをサガルマタというのを初めて知った。エベレストは世界共通語と思っていたらサガルマタと聞きなれない言葉に唖然としてしまった。ネパール人はエベレストではなくサガルマタと誇示しているように映った。その他に「いちじ、にじ、さんじ、じゅうじ、」とひらがなの学習を始めた。
左の後方の席には遅れてきたパキスタン人の夫妻がKさんから支援を受けていた。Kさんは普段は中高生を支援しているが社会人の支援者が足らなくなったので来てくれたのだ。パキスタン人の夫妻には馴染みがあるのか最初から意気投合して会話が弾んでいるように思えた。Kさんは英語が堪能なようで和かな雰囲気で学習が進められ自己紹介の練習から始めていた。
「Sさんはわたしのつまです。6カ月前にパキスタンから日本にきました。クルマの塗装する仕事をしています」と夫のRさんが声に出した。
後から奥さんのSさんが、
「Rさんはわたしのおっとです」と続けた。
Kさんの支援に感動したのか突然Rさんが「Kせんせいはすごいです」と声を張り上げた。きっとKさんの支援に納得してのひと声だったのではと受け取る。
Tさんが右の後方のテーブルで2人のスリランカ人を支援していた。スリランカ人のKさんとRさんは自ら進んでひらがなで書いていた。
「げんかん、かいだん、だいどころ、おふろ、しお、さとう、しょうゆ、ぎゅうにく、とりにく、やさい、くだもの、へや」
「この人たちは素晴らしいんですよ。やる気があるし、私はただついているだけなんですよ」とTさんは笑みを浮かべて二人を包み込むように接していた。2人は今回で4回目になる。黙々と学習に取り組んでいる姿が印象的だ。
「綺麗な字ですね」と声を掛けると苦笑していた。
インドネシア人のFさんも今回で3回目になる。Sさんが支援してくれた。最初からSさんが支援してくれていた。ちょっと覗いてみたらたら、
「マリアさんのうちはわたしのうちよりとおいです」
「ブラジルのトマトはにほんのトマトよりおいしいです」
みせのひと「いらしゃいませ」
リさん「すみません。このコートはMサイズですか」
会話文を学習していた。Sさんの静かな支援が熱く感じられた。
中高生の教室にはYさんが6人のバングラデッシュ人を支援していた。小型の白板を手に持ち時計の時間の読み方を支援していた。
「1,3,6,8、10はぷん。2,4,5,7,9,はふん」とぷんとふんの違いをわかりやすく説明していた。6人は真剣な顔つきでノートをとっていた。6人を一緒に支援することはなかなかできないものだと、Yさんの支援に思わず拍手を送りたくなってしまった。
その隣ではNさんがPさんを熱心に支援していた。Nさんの真摯な支援に頭が下がる思いがする。学習者のPさんも殆ど休まずに来ている。
今回も中国人のTさんを支援する。Tさんは新しい歴史教科書を教材室から持ってきて、ノートに書きこんでいた。
「世界の3大宗教、キリスト教の教義、イスラム教の教義、仏教の教義」
更に「日本列島における国家形成、自然と恵みの縄文文化、縄文土器、竪穴住居」
教科書の中にはいろんな絵が描かれていた。食べ物の絵もあった。竹の子の絵もあった。古代人も竹の子を食べていたのではと納得した。さらに、竹の子の食べ方に移行していった。
上海人は4月の後半にならなければ竹の子を食べないという。細い竹の子を選んで食べるという。あく抜きをしないで済むかと笑みを浮かべた。
日本でも出始めの頃の竹の子は灰汁がないからそんなに茹でなくても食べられると盛り上がってしまった。Tさんは中国の文化や歴史を教えてくれるからお互いに学び合っている気がした。
日本人のMさんはSさんがコピーしてきてくれたエッセイを読んだと言う。題名は「豆腐の存在価値」とか。一見硬い文章のような気がするが、多分豆腐だけに柔らかな内容ではと想像してみた。エッセイの作者の作品は何冊か読んだことがある。好きな作家の1人でもあるので読んでみたいと思った。
たまたま廊下で事務局のSさんと男の人とあった。男の人は見学にきたという。Sさんが男の人を紹介してくれた。市内のK学院で外国人に日本語を教えているという。さらに海外の経験も豊富とか。今日は見学ですが是非支援に来たいとのことだった。頼もしい仲間が1人増えたのは嬉しい限りだ。(K)
〇本日は天気も悪く寒い日だったので、学習者も少ないのではないかと思っていました。しかし、前回から参加している若者が友だちと来てくれました。バングラデシュから今年来日したという彼らは、皆20代の若者です。まだ、日本語はほとんど理解できません。それでも学習意欲はあり、皆真剣に学んでいます。彼らにはまず日本で安心して生活するための必要な日本語を学ぶ必要があると思います。今日は数の言い方から発展して時計の読み方を一緒に学習しました。しかし、改めて考えると日本語の数の言い方もとても難しいです。1分(いっぷん)2分(にふん)は、なぜ「いちふん」「にぷん」ではないのかと混乱してしまいます。そこは飽きないように工夫をしながら、実際の時計を使って、何度も口慣らしをしてもらうようにしています。(Y)