2025.11.28

第39回(2025年11月23日)開催報告

全体報告

 2回お休みをしてしまった。このコーナーでは書いていなかったと思うが、小学生のミニバスケットボールのコーチをしていて、大会日程と重なってしまったからだ。思い起こせば、コーチ歴は30年近くになる。審判もやっている。自分でも長くやってきたなとつくづく思う。今期は1年生が入部してきた・・この子が卒業するまでコーチをすると、あと何年??ちなみに、今大会の成績は県ベスト8入り!ベスト8を決めた試合は延長戦での1点差逆転勝利!思わずベンチでジャンプしている自分がいた・・・
 自主夜間中学について、最近は、年齢も国籍も多様な人が無料で学べる多文化共生的な学びの場と説明することが多い。簡潔で分かりやすい説明だと思っている。年齢も国籍も多様な人が参加することで自然と多文化共生的な雰囲気が生まれていく。このような場が毎週開催されることの意味は小さくないと思う。蔵の街校での学習活動は、小学生クラス、中高生クラス、社会人クラスの3つに分かれて行われているが、朝及び振り返りの15分のミーティングは学習者も応援スタッフも全員参加する交流の場となっている。一緒に歌を歌い、自己紹介をし、その日の学習成果を披露する。紙芝居も数回楽しんだ。自分は蔵の街校では全体のコーディネート的な役割を担っていて、特定の学習者も応援はあまりしていないので、全体ミーティングを盛り上げることが大きな役割の1だと考えている。現在、みんなで歌う5曲目の歌を選考中・・
 自主夜間中学に関心を持ち、特徴や魅力を知りたくて様々な文献を読んでいた時に出会った印象的な2人の学習者の声がある。24日(月)から始まった栃木県学習支援サポーター養成講座初回で「多様な学びの場をつくり育てる」と題して話した時にも紹介した。
 〇年齢も国籍もバラバラな人たちが、思い思いに勉強して いる様子に最初のうちはあっけにとられていましたが、慣 れてくると不思議とそれが心地よくなってくるのでした(『新 たな出発 松戸市自主夜間中学校の30年』2015、33頁)。
 〇自主夜中の人たちは、それぞれの「個性」や「人間性」を大事にしてくれる。これが私の一番の「幸運」だったと、二十年の歳月が流れた今、改めて感じている。・・小さな教室の中に「多様な価値観」が存在していることなのではないか。これこそが。自主夜中にあって公立の小中学にはないものである(同上、2015、28-29頁)。
 いかがでしょうか?

小学生クラス

「クイズ!」「ハロウィンとかクリスマスとか!」「前みたいに絵と字を書いてストーリー(紙芝居)をやる!」

 いつも来ている子どもたちに今日は何をやるのと聞かれて、何をやりたいのかと聞き返したら、次々とこれまで楽しかったことを言う。今日は休みだったスタッフHさんが頭を絞って考えた学びの形が子どもたちの心を掴んでいる模様である。う~ん、どうしよう。じゃ、クリスマスクイズ紙芝居を作ろうか?
 そもそも子どもたちにとってクリスマスとは何?絵を描かせると、ツリーにプレゼント、そしてサンタクロース。子どもたちにとってクリスマスはサンタさんがプレゼントを持ってくる日である。それでは、どういうクイズにするのか?

Aちゃん:「なぜサンタさんが夜に来るの?」
Bくん:「分かった。だって、サンタさんが見えないから朝とか来たら、プレゼントだけが浮いて皆が怖がるから!」
Bくん:「なぜサンタさんがあの長い四角い(煙突)から入るの?」
私:「煙突がないとどうするの?」
Cちゃん:「エントツがないとき、ハコにあるカギをとって、ドアをあけて、はいるの!」
Bくん:「わかった。幽霊みたいに壁をとって入る!」
Dちゃん:「サンタさんがパパだからよ」
 
 子どもたちから色んなクイズが出て、また色んな答えが出てきた。最初、私がワイトボートで子どもたちが考えたクイズを書いたが、あまりにも多くて、子どもたちに自分で書かせたら、Bくんは椅子を持ってきてはその上に立って、私の雜な大きな字の隙間に新しいクイズを書いた。子どもたちの発想は本当に面白い。逆にCちゃんとDちゃんはまだ幼稚園児なのに、一番リアルなことを語る。人間の想像力は学んだ語彙が増えてから初めて開花するかもしれない。

 「ネパール人、ネパール人、ネパール人。日本生まれ、日本生まれ、日本生まれ」
 今日の小学生クラスには5人の子どもがいたが、部屋に入るなり、1人の子どもが自分とほかの人のことを指しながら、そう言っていた。なぜそう言いたくなったのかが分からないが、今日は新たにネパールから来てまだ2ヶ月しかない小学校6年生の女の子もいた。日本語を殆ど話せないなか、体と手で言いたいことを表現したり、日本生まれの女の子に通訳してもらったりして、私が言っていることの意味を確認した。 でも、今日は日本語の勉強よりも絵を描きたいという。途中、隣りの中高生教室からネパール人の女の子とパキスタン人の男の子も入ってきて、勉強を休んで一緒に絵を描きながらお喋りをした。
 日本生まれの子どもたちと比べて、数年前に来日した子どもたちはまだまだ日本語で自分の気持ちを十分に表現できない。難しい表現になると、少し逃げ気味になる。しかしながら、子どもたちは親の状況が変わらなければ、これから日本で生きていくし、日本で学んでいくであろう。リラックスして絵を楽しんでいる子どもたちの横顔をみながら、ここは一つの居場所とともに学びや交流を通して子どもたちが前進する力に繋げられるならと考え込んでいた(T)。

中高生クラス

 今回の中高生クラスの学習者は6名でした。中学1年Kさん(フィリピン)、中学2年Kさん(ペルー)、中学2年Bさん(ネパール)、母国で中学4年を修了し日本で高校進学をめざすBさん(ネパール)、中学3年Hさん(パキスタン)、そして今回初参加の中学2年Tさん(中国)です。この順番で各担当スタッフからの報告を掲載します。

 〇中1Kさんについては、当初私が他の学習者と一緒に応援を試み、そのあとはスタッフYさんが応援しました。Kさんは、数学の作図と方程式の問題に取り組みました。コンパスと定規を器用に使い、直線の垂直二等分線などの作図を繰り返し練習しました。方程式の練習問題では、解を暗算で求められるほどに理解していましたが、小数や分数の方程式の場合には、途中の計算も書いて、確認しながら解くようにしました。中高生クラスのスタッフ数が足りなかったので、1対1を基本とする応援ができなかったことが残念です。次回はスタッフ数が増え、応援が十分にできるようにと思います。(Y、佐々木一隆)

 〇今回は、今年の6月に来日された中学2年生のペルー人の生徒さんと一緒に日本語の勉強をしました。話す練習をしたいとのことだったので、しりとりを日本語でやりました。その後、でてきた単語を使って、文を作り話す練習をしたり、早口言葉を日本語の意味を考えながら練習したりしました。最後にテキストを使って、会話の練習をしました。新しい言葉を楽しみながら学んでくださったようでうれしく思いました。(C)

 〇中学2年Bさん、本年8月に来日し高校進学をめざすBさん、中学3年Hさんは、私が対応しました。中2のBさんと高校進学をめざすBさんはともにネパール出身で、前半は、たべもの、お店、反対ことばなどの絵カードを使ってクイズ形式で日本語の学習をしました。中2のBさんについては、中学校での学習に関する質問(数学など)に応ずる予定でしたが、特に質問はありませんでした。後半では、二人は小学生クラスに移動して、絵を描きながら日本語を使っての交流活動をしました。Hさんは来年2月に高校入試(国語、数学、英語)があり、合格をめざして勉強しています。本人によれば、英語は得意、国語は苦手、数学はまあまあとのことでした。この日は、y=ax2のような二次関数の学習を応援しました。特に、『新しい数学3』にあるまとめ問題のうち分からなかった箇所をいっしょに考えながら、最終的には本人に解答してもらい、全問正解に至りました。達成感があったようです。残りの時間は小学生クラスに行って、他の中高生と交流しました。( 佐々木一隆)

 〇今日は、初めて今回参加するという中国から来た中学2年生の男子を担当した。本人の環境やここで学びたい事、そして、日本語の読み書きや会話のレベル、趣味・興味などの基本情報についてメモをとりながらスタート。彼は今日、何も教材は持って来ていないということだったので、私の頭の中では彼との慣れない会話から必要な情報を取りながら『今日は、どんな学習をしたら良いのかなぁ~?』と常に自問自答。
 日本に来てちょうど一年が経過し、中学校へも通っているということもあり、日本語での会話や筆記によってほぼ情報収集・交換は出来たので良かった。(「小学3年生までの漢字は大丈夫です」と自信を持って話してくれたので、今日の学習では、会話と同時に漢字の学習も取り入れて行った)国際交流協会にある教材の中からテキスト「私らしく暮らすための日本語ワークブック」を選び、テーマは『日常について伝える』にした。
 休みの日、そうでない日、の24時間をどう過ごしているかを円グラフに書き込んで行くのだ。それを見て彼の時間の使い方に個性が溢れすぎていて二人で大笑いすることがたくさんあった。あっという間に時間が流れ、本日の学習は終了。初対面で少ない情報から選んだテーマがぴったりと当てはまった感じがして、とても嬉しかった。(K)

社会人クラス

 〇学習者は14人 全体の支援者は11人。中国人3名、バングラデッシュ人3名、スリランカ人2名、パキスタン人2名、日本人1名 ネパール人1名、インド人1名、フィリピン人1名
 全体のミーティングで「輝くとちぎづくり」の最優秀賞の表彰状が掲げられた。今までの活動が認められて、ますます活動に弾みがついてきた気がしてきた。そんなこともあってか社会人のクラスには予想以上の参加者が来てくれた。ミーティングの後で「せんろはつづくよどこまでも:……」をTさんの指揮とTさんのギター演奏で合唱する。T、Tコンビが久しぶりに復活し盛り上がりを見せた。
 毎回のようにKさんの隣の席に腰を下ろした。いつものルーティーンの固い握手を交わした。彼の分厚い手からはインド大陸の熱情がズンズン伝わってきた。このところ毎回きていたNさんの姿が見えなかったので訊ねてみたら「わかりません」とあっさり答えてくれた。いつもなら「まだ、ねています。後から運転してきます」と理由を説明してくれるのだが反応が鈍かったのが少し気になった。Nさんはミーティングが終わって学習が始まるころにスーと教室に入って来ていた。はたして今日もスーと忍者のように入ってくるのではと期待をかけていたが姿を見せることはなかったので、体調を崩して寝込んでいるのではないかとネガティブに捉えてしまった。
 Kさんは学習が始まると来年のN5の試験に向けて漢字の練習を始めた。書き順を間違いないように一字一字ゆっくりまるで写経をするよう書いていた。「日、月、火、水、木、金、土、さらに月曜日、火曜日…金曜日」と続いていった。これほど漢字が書けるとは思ってみなかったので思わず「素晴らしいですねこんなに丁寧にきれいに書けるなんて驚きました」と手を叩いてしまった。Kさんも大きな目を向けて来て優しい笑みを浮かべた。休みなく通い続けてきている結果と確信をした。それにしてもTさんの粘り強い支援には見習う点が多々あった。TさんとKさんのマッチングが長く続くこことを願った。
 学習が始まってから3人のバングラディシュ人が入ってきた。前回かなり送れて交流協会のSさんに伴われてきた。支援者が少なかったのでSさんが支援してくれた。二人は殆ど日本語が分からないようすだった。一緒についてきてくれた人が通訳をしてくれた。彼もバングラ人という。O町にある大手の電機会社で働いているとハッキリとした日本語で説明してくれた。来日して20年近くになると付け加えた。二人はまだ来日して2週間しかたってないようだ。多分彼の会社で働いているのではと察した。二人の年齢は30代前半と映った。もしかして家族を自国に残して働きにきたのかもと深掘りする。ふたりからこれから頑張るという熱気が伝わってきたからだ。日本での生活が安定してきたら家族を呼び寄せるのではと更に先を読んでしまった。
 そこに中国人のUさん中国人のSさんと入ってきた。Sさんは3回目になる。Uさんは殆ど日本語を話せないのでSさんがサポートしていた。さらに遅れて二人のカップルが入ってきた。自国の民族衣装を纏っていた。多分中央アジア系の衣装に見えた。年齢は40歳半ばから50代に捉えた。名前を書いてもらいたいので紙を渡したらカタカナで書いてくれた。女の人もゆっくり書いてくれた。カタカナは書けるから少し日本語は分かる気がしたが、あまり通じなかった。後で夫婦とわかった。どうしてかなりの年齢になって来日してきたのか興味が湧いてきた。殆ど日本語が分からない人が6人集まってしまった。支援者が少ないので対面学習は無理なので、Tさんが6人を支援してくれることになった。Tさんは長年日本語を支援してきた実績があるという。Tさんは先ず全員に名前を書くように紙を渡した。更に自己紹介に移っていった。Tさんの大きな声が教室中に響き渡った。6人はまるで小学1年生のように小さく見えてきて、先生の指示に従って声を張り上げていた。「きょうは11がつ23日です。あしたは11がつ24かです」さらに一人一人の誕生日を聞いていった。彼女の采配にドンドン引き込まれていっていたように映った。
 スリランカ人2名は初めて参加してくれたH大学生のMさんに支援してもらうことになった。2人のスリランカ人は今回で3回目になる。続けて来てくれるということはKさんのように休まないで通ってくれるような気がしてきた。年齢は30代に映った。ノートにはひらがなカタカナが一字一字整然と書いてあった。あまりにも丁寧な文字に感動をした。日本語を本当に学びたいという叫びが一文字一文字に現れていた。日本語を学んで日本で働きたいのとの思いも伝わってきた。人手不足の日本にとっては大切な人材になるのでは確信をした。
 今回は日本人のMさんと中国人のSさんを支援することになった。Mさんは開校以来通っているので自ら進んで学習を始める。間違いの漢字を捜す本をとりだした。「その信仰は面々と受け継がれてきた」いうと例文があって「面々が間違っているので面々の字を教えてください」と例文を目の前に持ってきた。「面々」の他に漢字があるのか考えたが思いが付かなかった。いくら考えても出てこない。漢字は書かないとどんどん海馬から霞んでいってしまう。ここで降参するのも癪だったが降参するしかなかった。Mさんが解答書見て教えてくれた。「綿綿」だった。面じゃなくて綿だったのだ。解答書には「長く続いて絶えないさま」とあった。全く思い出さなかったというより完全に消えてしまっていた。次に、「親不考」の間違いは考の字が与えるではなく子供の子と直ぐに分かった。不幸するのは子供と覚えていたからだ。漢字は何かとリンクして覚えておけば覚えられるような気がする。
 中国人のSさんは今回で3回目になる。来日して20年以上になるという。彼女は日本語を深く理解し正しい発音がしたいと口にした。早速、教材室に行って6年生の国語の教科書を見つけてきた。掲載されている短文を読むことにした。漢字の意味は大体理解をしているように見えた。中国の漢字と日本語の漢字の意味がかなり同じものがあるからだ。読み方はかなり違っているので一字一字読み方を学習していった。正しく発音したいのでというので何回も発音を繰り返した。特に促音のシが何回繰り返してもヨになってしまったりしていた。例えば食事中は「しょくじちゅょうになってしまう。必死に日本人のように発音がしたいと口にしていた。彼女は普段はあまり日本語を話さないような気がした。まわりに中国人がいるから話さないで済むのかもと捉えてしまった。出来るだけ日本人と会話をするようにすればともっとスムーズに話せるようになると進言をした。
 N4のAさんとZさんと中国人のPさんは支援者のYさんとIさんの後について中高生の教室にいった。学習が終わるまで顔を合わすことはなかったので熱いバトルを繰り返していたのではと膨らませてみた。
 いつの間にか70代の女性が学習の状況を見て回っていた。声を掛けると直ぐに応じてくれた。隣県のK市からやってきたと明かしてくれた。K市で外国人の子供の支援をしているという。その他にも支援をしているとか。今、問題になってきているのは支援者が70、80代と高齢になってきているのでマンネリ化してきているので何とか活性化させたいと、いろんなところに出向いて方策を模索していると吐露してくれた。最後に「皆さんがあまりにも熱心に取り組んでいるのを見て驚きました」と緩笑みを浮かべていた。確かに社会人のクラスは熱の塊のようだった。(K)

 ・今回はYさんと一緒に、フィリピン、ネパール、中国出身の日本語学習者3人の支援をしました。いつも来ている3人ですが私は初めて一緒に学習するので、はじめにわかりやすい日本語で自己紹介をしました。ところが「今、ヨガにハマってます」「ハマってる??」Yさんと一緒にこんな時に使うよといくつかの例を説明しました。やさしい言葉を使ったつもりでしたが感覚的な言葉は説明が難しいですね。そして、自分が何にハマっているかとか休日何をしたかどこに行ったかなど、漢字や絵も使って日本語の会話を練習しました。それぞれの国の違いもわかり楽しい時間でした。後半は読めない漢字を辞書で調べる練習をしました。部首の画数から調べる方法を説明しましたがどの部分が部首なのか解りずらい文字も多くまた読み方も幾通りもあり、日本語の難しさを感じました。
 3人とも目標を持って日本語の学習をしているそうです。この場だけではなく自宅でも学習していると話してくれました。これからもずっと来てほしいな、少しでも力になりたいなと強く思いました。(I)