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2025.9.29
第31回(2025年9月21日)開催報告
諸々報告・朝の全体会議での歌のコーナー
「切手のないおくりもの」(財津和夫 作詞・作曲)を聴いた。「手のひらを太陽に」と「前を向いて歩こう」に次ぐ3曲目はこの歌を選んだ。まずは、「切手のないおくりもの」というタイトルが凄い。こんなタイトル、なぜ思いつくのだろうか。この歌は、さまざまな「あなた」へ、いろいろな気持ちを込めた歌を、切手のないおくりものとして届ける物語だ。「わたしから」、「年老いた」、「知り合えた」、「別れ行く」あなたへ、この歌を届けよう。先の2曲と同様に、この素敵な歌を皆で歌えるように練習していくのだが、本日はTTコンビが不在なので、歌詞を資料として配り、ユーチューブから財津さんのじっくりバージョンを聴いてもらうことにした。みんなが静かに聴いてくれるシーンを想像していたが、なんと!歌い出す人が続出!! 歌わずにはいられない、心に突き刺さる歌なのだろう。初めて聴く人もいるので、次回から練習。
ふと、「あなたへ」の前の文字がすべて5文字であることに気付く。そして、自分なら、どのような「あなた」を想いうかべ、どのようなメッセージを届けるのだろうか、考えてみたくなった・・・
・「こんばんは」上映会報告
9月13日午後に上映会が開催された。約40人が参加。上映の前に、映画の最後に出てくる素敵なメッセージを皆で読み上げた。「学校はおもしろいところです 学校はなんでも教えてもらえるところです 学校はちょっぴりつかれるところです 学校は先生が親切です 学校は一番いいところです 学校は夢があるところです 学校は宝物があるところです 学校は勇気がつけられるところです 学校はわたしたちのふるさとになれるところです」何度も噛み締めたい言葉だ。上映の後は、伸ちゃんが登場。当時の思い出や裏話(?)などをたっぷり話してくれた。20年前の伸ちゃんと現在の伸ちゃんに出会う今回雄の上映会は、何というか、自分にとっては不思議な時空間だった。その後、グループに分かれ、感想を言い合ったり、質問を用意。伸ちゃんはたくさんの質問に丁寧に答えてくれた。有難うございました!!
・シンポジウム「自主夜間中学は何を目指すのか」9月28日(日)13時半開催!!
会場は:きららの杜とちぎ蔵くらの街楽習館1階大交流室。いよいよ開催が迫った!!工藤・笹山さん・山本さんは、「活動を続ける中で大切にしてきたこと」、「これまで出会った印象的な人物や出来事」、「これから活動する人へぜひ伝えたいこと」の3点についてお話しされます。今後の自主夜間中学の活動をより良きものにしていくために、大いに学びましょう。
交流会の内容を急ぎ協議。写真で綴る「蔵の街校」の1年、日本舞踊、絵本読み聞かせ、みんなで歌おう「あなたへのおくりもの」・・
楽しく学んで交流するシンポジウムにぜひご参加ください。無料で、事前申し込み不要です。
問い合わせはtamakimmm@yahoo.co.jpか090-7731-9345まで。
<小学生クラス>
本日の参加は4名。と言ってもスタート時は幼稚園の年少組のお子さん1名だったので、いつもおしゃまで元気いっぱいの彼女もいささか緊張気味でした。とりあえず緊張を和らげるため好きなキャラクターの絵を描いたりしながらおしゃべりしていると、顔馴染みのお姉さんたち・・・年長さんと3年生、6年生・・・が来てくれ、いつもの賑やかさが戻りました。1週空いた活動でしたがみんなちゃんと覚えていてくれて、スムーズに紙芝居製作の活動を再開しました。ストーリーに沿った作画をして欲しい大人の意に反して、子どもたちは描きたいものを描いていく(汗)そこを何とかストーリーに寄せていこうとしますが、自由奔放な子は画用紙に折り紙を貼り、ドアと思しきものを付け出した!「???紙芝居にドア?」と尋ねると「開けると出てくるの!」なるほど。仕掛け絵本のようで楽しいかも。。。こうして自由で奇想天外な紙芝居製作は続くのでありました・・。あと2回くらいで完成!と啖呵を切ってしまったので、しかも最後の振り返りの時間に6年生が「もう直ぐ出来上がるので楽しみにしていてください!!」と自ら手を挙げキラキラした目でピーアールしてくれてしまったので(?)ハードル爆上がり!お尻に火がつきまくり!!と冷や汗タラリの担当支援者でした。
そしてもう一つ。今回は栃木CATVの取材ということでカメラマンさんが様子を撮影しに来てくださったのですが、カメラマンさん曰く「カメラに慣れていないでしょうから緊張気味でした」という大人の学習者の様子をよそに、子どもたちは「私を撮って!」と言わんばかり・・いや言っていた。のカメラ目線、アピール力で少々盛り気味の様子で活動していました。今時の子たちは生まれた時から日常的にカメラを向けられているので、カメラ慣れ、撮られ慣れしているんですね。
来週もまた紙芝居製作になります。たくさんの子たちが来てくれることを心待ちにしています! (橋本まり)
<中高生クラス>
今回の中高生クラスの学習者は前回に引き続き4名でした。2名は前回から連続で、あと2名はおよそ1か月ぶりの参加でした。各学習者にはそれぞれスタッフ1名が寄りそって、学習活動を応援しました。このような場合、コーディネーター的な役割の私は、4つのペアのところを回っていき、少しだけ参加して学習状況を確認したり学習者やスタッフを応援したりすることがあります。この日の私はまさにこうした「参加」をしました。ネパール出身の中学2年生Bさんは、今回も他のクラス担当のYさんが応援してくれて、世界地図を使って、韓国、中国、北朝鮮などの位置を確認する学習をしました。教科としては社会(地理)に当たると思いますが、多分に日本語学習の面もありました。すなわち、Bさんが漢字カードを一枚一枚見て「東」「西」「南」「北」などの方角を示す漢字や、「山」「川」「谷」などの地形を表す漢字を音読して、スタッフが確認するという方法です。私はこの作業を少し手伝いました。使用した教材は、『みんなの日本語初級I』本冊とKanji Look and Learnワークブックで、各漢字の意味を英語で確かめながら学習の定着を図りました。
フィリピン出身の中学1年Kさんは、この日「正の数・負の数の四則計算」(例:9+(-4)×2)の練習問題に取り組みました。今回はTさんが一人で応援しました。応援の特徴は、一定量の問題の解答時間を測定し、正答数も記録して、それを2回繰り返すというものでした。その結果は、回を重ねるごとに解答時間が短くなり、正答率が高まりました。学習意欲を高める工夫がなされたと言えます。その証左として、Kさんは自主的にもう1回チャレンジして、最短時間と最高の正答率を記録しました。自主性も啓発されたのかもしれません。
バングラデシュ出身のSさん(姉)は高校1年生で、Iさんが恒常性と情報の伝達に関する学習を応援し、途中から中学2年生も応援に加わりました。ヒトの皮膚、その下にある血管やリンパ腺の働きなどが具体的内容で、日本語と英語を使って丁寧に説明していました。こうした学習から見えてきたのは、高校の教科学習と並行して、学習言語(例:恒常性、情報、伝達など)としての日本語学習の必要性です。このため、N4やN3レベルの教材から語彙学習のためのプリントを用意し、次回以降に向けて自主的学習を促しました。
バングラデシュ出身のSさん(妹)は中学3年生で、Mさんが漢字と詩の学習を応援しました。漢字については近々行われる中学3年基礎学力テストへの対策です。具体的には、「力をセイギョする」のカタカナ表記の箇所を「制御」と漢字で書くというタイプの問いに取り組みました。その際には、漢字が正しく読めて書けるだけでなく、スマホや冊子の和英辞典などを参照しながら、常に句や文の中で漢字の意味を確かめる配慮がされていました。 学習応援する上で重要な点だと思います。詩の学習については、教科書にある詩を朗読しながら、設問の答えを確認するというものでした。応援スタッフによる朗読も重要で効果的な方法であると感じました。(佐々木一隆)
<社会人クラス>
学習者は7名。インド人2名、日本人1名、ネパール人1名、タイ人1名、中国人1名、フィリピン人1名。支援者は17名。学習者は猛暑の疲れもあってか前回よりかなり減った。今回は栃木ケーブルテレビの録画撮りが入ったのでかなリ緊張した。意識しないようにしていてが気持ちが高ぶって宙に舞っているような感じがしてきた。
社会人のクラスは7名の参加者となった。今回は支縁者の欠席者が何人かいたので、学習者とどうマッチングしたらいいのか苦慮する。
先ず、毎回出席しているKさんに挨拶にいった。大きな目を向けてきていつもルーティーンの固い握手を交わした。今日はKさんの支援をしているTさんから休みの連絡が入っので知らせた。最初は休みの意味がわからなかったのか反応が鈍かった。何回か説明してもなかか理解してもらうことができなかった。そのうちに分かってもらうことができ丸い目で笑みを浮かべた。
TさんはKさんが蔵の街自主夜間に通うようになってからの支援者だ。お互い息が合っているのがジンジン伝わってくるものがあった。どうして、彼は休まず通い続けてくるのか本当に感心してしまう。日本語を学びたいと言う一心なのではと想像する。今まで彼ほど真剣に学んだ記憶がないので自己反省する。
Kさんの支援はUさんがすることになった。以前にTさんと支援していたからだ。KさんとUさんの学習を眺めていると何かお互いに火花を散らしているような凄みが感じ取れた。Kさんの追及力がそうさせているのかもしれない。納得しなければどんどん押してゆく。何度か支援して彼の熱意を直に受け止めたことがあったからだ。とことん聞く力をもってる気がする。
今回も友人のNさんを伴ってきた。多分彼もKさんに感化されて来てるような気がしてきた。彼は暫くの間休んでいた。理由はフォクリストの免許の試験を受けるためとKさんが説明をしてくれたので、疑うことなくスンナリ受け入れた。その後、免許を取得できたのか分からない。彼の学習はIさんが支援した。Iさんは何度か支援しているからだ。
何故かNさんと支援者との距離感を感じた。彼なりに学習していると思うのだが、Kさんと比較してしまうかからかもしれない。学習者一人一人のスタイルがあるからそれぞれの方法で学ぶことが大切なのかもと納得することにした。彼はKさんと違って寡黙だ。最も日本語を自由に操ることができないから閉じてしまっているのかもしれない。
最初の挨拶で「げんきですか」と声を掛けると薄い笑みを浮かべて返してくれた。教室に来るだけでもかなりのプレッシャーを感じてるのではと慮る。二人とも休憩もとらずに学習をつづけていた。
突然、ミーテングで紹介された女子高生のMさんが飛び込んできた。若い女性が社会人のクラスに来ることはあまりないので一瞬引いてしまった。直ぐ後ろにはまだ支援者が決まってないNさんがソワソワしていた。Nさんとはかなりの年齢の差があったがMさんに支援してもらうことにした。Nさんはまるで孫娘を向かい入れるように椅子を引いて受け入れてくれた。「まぁ、可愛いねえ。かわいくてうれしいい」と連発していた。孫娘と若い祖母という構図が出来上がったような気がした。
何度かNさんを支援したことがある。彼女は整体院を開いているので、お客さんとの電話の応対の仕方を訊ねてくることが多かった。はたして、高校生のMさんがどう向き合うのか不安が募ってきた。学習が始まるとNさんがリードしてるのが窺えた。Mさんは祖母と対話しているように接していた。笑い声が絶え間なく聞こえてきたので心配するようなことはないのではと安堵した。
今回は Aさんの支援をすることになった。左隣にはSさんがいた。二人とも日本語能力試験N4を学習している。前回はTさんが支援していたが休みのためにFさんと支援す ることになった。Fさんが前回学習した動詞の復習ページ12から13、14から15をプリントしてきてくれた。一度学習しているのでAさんは黙々と回答欄に記入していった。彼女は工場に勤めているので日本語を書いたりすることがないと言う。ひらがな、カタカナは殆ど書いたり読んだりすることができた。つまる「っ」は書くのを忘れたりすることがある。例えばバナナをかった。というようなとき「バナナをかた」と書いていた。「っ」がぬけていた。ていねい語とふつう語に書きなおす問いに「死ぬ」と言う単語が出てきたのでタガログ語では何というのか教えてもらう。すると集中して取り組んでいた顔が笑みに変わってきてタガログ語で書いてくれた。「PATAY」、英語は「DIE」とノートに書いてくれた。
フィリピンではタガログ語と英語を使ってると言う。タガログ語の中に英語を混ぜてるのでフィリピン独自の言語を編み出してると柔らかな笑みを浮かべた。更に「食べる」は「KAINTA」とすらすらと書いてくれた。何だかタガログ語が肌に馴染んできた「ありがとう」は「SALAMAT」。「ありがとうございます」は「SALAMATPO」とドンドンタガログ語で埋まった。そして嵌ってしまった。これならタガログ語をマスターすることができるかもと変な自信が湧いてきた。
日本語の五十音に当たるものはありますかと深掘りして伺ったら、「A,BA、KA、DA、E、GA~」と続けて書いてくれた。。日本語と似たところがあるような気がした。これでフィリピンのことが少し知ることができ身近に感じてきた。たまに子供の教科書を開いてみるが漢字があるから難しいとトーンが急に下がってしまった。やはり漢字は難解のようだ。
毎回殆ど同じ席で中国人の学習者とNさんががっちりとタッグを組むように学習に取り組んでいた。かなり熱が入ってるように映った。二人の世界が構築されていた。素晴らしい光景だ。これが自主夜間の見本のような気がしてきた。日本人コンビも負けず劣らず見事な学習を展開していた。学習者のMさんは開校以来休まず通っている。彼女の学習欲はますます盛んになってきているのではないかと思う。
いつでも、だれでも、何歳になっても学ぶことができるのを実践しているのでは。暑い夏が終わりを告ようとしているが教室内はまだまだ真夏のようだ。(国母仁)



