2025.9.26

第30回(2025年9月7日)開催報告

<全体報告>

 「こんばんは」上映会(9月13日)とシンポジウム「自主夜間中学は何を目指すのか」(9月28日)の開催が迫ってきた。本日の朝のミーティングでは、改めて紹介し、参加を呼び掛けた。栃木県立とちぎ学びの夢学園の開校(2026年4月)を半年後に控え、また、とちぎ蔵の街自主夜間中学が昨年10月に開校以来約1年が経過した段階で企画したビッグイベントである。楽しみ!しかし、緊張! 
 主催者にとってやはり不安なのは、どの程度参加してくれるかということ。自分が講師として呼ばれる講演会などでは正直参加者数はあまり気にならないが、主催者となると話は別。東京都の夜間学級を描いた「こんばんは」は素晴らしい映画だし、登場していた伸ちゃんの話が聞ける。シンポジウムに登壇いただく工藤慶一さんは札幌で35年、山本直子さんは奈良で30年近く自主夜間中学の活動に関わってきた。笹山悦子さんが約5年前に開校した名古屋の自主夜間中学は登録者が300名を超える大規模な学びの場に成長している。この3つの地域の話が一緒に聴ける機会は本当に貴重。皆さん、是非参加してください。
 工藤さん、山本さん、笹山さんには、「とちぎに夜間中学をつくり育てる会」が主催してきた夜間中学研修会でご報告いただいているが、実は、個人的にも大変お世話になっている。4年前に開校したとちぎ自主夜間中学宇都宮校の活動で、いろいろと壁にぶつかり、先行きも見えなくなっていた時に、個別にゆっくりとお話を伺うことが出来た。山本さんとは西和に夜間中学をつくる会総会前に近くの喫茶店で。笹山さんとは名古屋駅近辺の喫茶店で。工藤さんとは居酒屋で!いずれも2時間近くお付き合いいただいたと記憶している。壁にぶつかっている内容をあまり具体的に言うことが難しかったこともあり、もしかすると、雑談のようなイメージを持たれたかもしれないが、自分にとっては人生相談だった。工藤さん、山本さんの長い経験談や笹山さんの勢いを感じるお話から得たものは多く、随分元気と励ましをいただき、「前を向いて歩こう」の大切さを改めて教わった。その3人が集結。9月28日(日)だったら栃木に行けると返事をいただいたときの喜びを思い出す。
 宇都宮大学HANDSプロジェクト(外国人児童生徒教育支援事業)で知り合い、気が付けば15年近く研究や活動でお世話になってきた加藤佳代さん(田巻の最初の印象は「とても怖い人」だったそうな)と加藤さんを通じて知り合うことが出来た松島恵利子さんも応援に駆けつけてくれる。楽しくて有意義な一日を是非多くの人と分かち合いたいと思います。プログラムは添付ファイルをご覧ください。
 無料で、事前申し込み不要です。
 問い合わせはtamakimmm@yahoo.co.jpか090-7731-9345まで。(田巻松雄)

<小学生>

 本日の参加は5名。今日1コマ目はここ数回行っている「紙芝居制作」です。
各人の進捗状況に合わせ、下書きをする子、色塗りに入る子、色塗りの仕上げをする子それぞれです。皆が自分のペースで同じ事をやる活動は性格がとてもよく現れます。もちろんその活動が、好きかそうでないかでモチベーションは各各違いますが、絵の描き方、絵具の使い方、色の塗り方等一つ一つに性格が表れていてとても面白かったです。今まで感じてきた「その子」の違う面を発見できました。今後はその個性も取り入れながら活動を考えていけるといいなと思いました。
そして2コマ目は「外国人向け消防訓練」の様子を見にいきました。消防士さんの姿を見たりAED訓練の様子を見たり・・・と見学を考えていましたが何事にも好奇心旺盛で積極的な子どもたちなのであっという間に訓練に「参加」し、心臓マッサージも行っていました。その行動力には驚かされます。
その後外で消火器訓練にも参加し、何度も火を消し止め?消防士さんから拍手をもらっていました。
次回は21日になります。そろそろ紙芝居完成に向けてまとめの段階に入りたいところ。たくさんの子達が来てくれるといいな!と思っています。(橋本まり)

<中高生クラス>

 今回の中高生クラスの学習者は4名でした。この日は10時より1階の大交流室で外国人への防災セミナーが開かれるため、このクラスの4名も他のクラスと同様に前半はいつもの部屋で学習活動を行い、後半に希望者はセミナーに参加することになりました。このクラスは4名全員が参加しました。防災セミナーでは、AEDや消火器の使い方、119番のかけ方など、普段はなかなか学ぶことのできない体験をしました。 
 前半の学習活動の様子は以下のとおりです。フィリピン出身の中学1年生のKさんは、スタッフのKさんとTさんが応援しました。理科の教科書を使って生物に焦点をあてた学習をしました。魚類とイルカとの違いは何か、脊椎動物(フナ、クマ、ワシ、サンショウウオなど)のうち卵生はどれで胎生はどれかの区別、サイエンス資料を用いてルーペや顕微鏡について学びました。スタッフが説明するとKさんは理解できた様子だったそうです。素晴らしい! ペルー出身で中学2年生のKさんは、日本語初級の学習者でMさんが応援しました。基本動詞「~ます」の用法を学習するため、色刷りのイラスト集を使って日常生活の各場面で「まどを開けます/閉めます」「私はプールで泳ぎます/ました」などの例を挙げ、時にKさんに問いかけながら、日本語学習の応援をしていました。基本動詞を目的語や主語などの基本要素と組み合わせる形で、わかりやすく自然な提示がなされていて、日本語入門期の学習者を応援する効果的な方法を私は学ぶことができました。ネパール出身の中学2年生Bさんについては、先週に引き続きYさんが応援しました。Bさんの家族の話を日本語で説明してもらいながら、その都度単語の知識を確認する形で学習しました。また、ネパールのインターネット事情も教えてくれ、応援スタッフも学ぶことができました。最後に、遅れて来たネパール出身の中学2年生Sさんについては私が急遽対応し、漢字の学習を希望していることを確認したところで前半が終了しました。
 後半については、4名がそれぞれの行動をしました。ネパールの二人はYさんと一緒にいち早く防災セミナーに参加し、最後までそこで(そして屋外にも出て)楽しんだそうです。よかったです! Sさんは次回に漢字の学習を期待しています。ペルーのKさんは私と一緒にセミナーに参加して、短時間ですがAEDの模擬訓練を見ました。その後、前半の部屋に戻って日本語での会話(9歳の時にバレーボールを始めたことなど)を楽しみました。見学に来た高校2年生も応援してくれました。フィリピンのKさんは少し経ってからセミナーに参加して楽しんでいたようです。その後、前半の部屋に戻って、奈良時代の歴史(東アジアの緊張と律令国家の歩み)の学習に取り組みました。やはり難しかったようです。
 中高生クラスの4名は、おそらく他のクラスと同様に、普段の部屋での継続的な学習と防災セミナーでの貴重な体験学習の双方を味わうことができて、とてもよい機会に恵まれたと思います。同時に私も楽しむことができ、「きららの杜とちぎ蔵の街楽習館」が有する学習と交流の場としての幅と深さ、人と人のつながりを強く感じました。(佐々木一隆)

<社会人クラス>

 学習者は9名。支援綾は17名。ネパール人3名、インド人2名、日本人1名、
 タイ人1名、フィリピン人1名、ペルー人1名
 きららの杜とちぎ蔵の街楽習館センターの駐車場には赤い大型車の消防車が駐車していた。いつもと違って何か物々しい雰囲気が伝わってきた。館内のエレベータに乗ろうとすると細身の男のひとがすでに乗っていた。乗り合わせた人が「今日は何の訓練が行われるのですか」と声を掛けると外国人の防火訓練が行われますとやや俯き加減に応えてくれた。エレベータから降りる寸前に「私はカナダ人です」と今度は目を合わしてくれた。
見た目は日本人と変わらない。見た目だけでは人は分からないものだと改めて自覚する。
 全体のミーテングで、外国人の防火セミナーの説明があった。①AEDの使い方。②119番通報の仕方。③消火器の使用法。外国人が増えてるからいざというときのための訓練の必要性を感じた。今や368万人の外国人がいるという。人口の3パーセントとか。2040年には10人に1人が外国人になると言う。外国人は身近な存在になってきた。消防署員に7名の外国人が所属しているという。7名とは驚きだ。もしかして日本人の消防署員のなり手がいなくなれば全部外国人にたよらざるをいなくなってくるのでは。
 Kさんを支援していたTさんが休みなので支援しようとしたらすでに支援者が決まっているという。Kさんの友達も来てくれた。もう一人の友達は元気がないという。部屋で寝ていると右腕を右の頬にあてて寝てるポーズの真似して笑みを浮かべた。慣れない日本にきて仕事や文化の違いに疲労困憊の状態にあるのではと心中を察した。
 Kさんは休まずに学習にきている。学習するのが楽しいのか小学生のように目を輝かせている。何か少しでも助けになってやろうと目が合えばげんきですか」とひと声かけてやると、四角い日本語で「げんきです」と直ぐ返してくれる。なるべく日本語で会話をするようにかけ続けている。英語が上達になる方法は間違っててもいいから外国人と会話を交わすことだと聞いたことがある。
 机上の問題集の中に「休みの日にはどこへ行きますか」という一文があったので、訊ねてみたら「やすみの日はどこへもいきません、ここへきます」と大きな目で返してくれた。彼は休憩時間もとらずに支援者と向き合っていました。
 その後、タイのNさんをSさんと支援することになった。彼女は何故かソワソワとなかなか席に着こうとしないで立ったまま、下に行きたいと迫ってきた。席についてもカバンからノートを出す様子がなく下に行きたいと指を下に向けていました。防災訓練を見学にいきたいと言うのです。見学は2時間目からと説明してもソワソワがおさまらなかったので、Sさんが宥めるように黒板に日本の家系図を書いて説明すると少し落ち着いてきました。
 2時間目に入ると直ぐに階下に行きました。どうしてあれほどまでに防災訓練が気になるのかと考えてみるとふと降ってきました。彼女は整体院を開いているので、もし、店で火災が発生したらお客さんの安全な誘導や119番の通報、消化器の使い方、さらに、お客さんが気を失ってしまったらAEDの使用法も知りたかったのではとソワソワの謎が一気に解けてきました。かなり詳細に訓練の様子見て学んできたのか2間間目が終了するまで戻ってきませんでした。
 NさんとSさんが階下に行った後に、母娘が支援者のKさんと入ってきました。娘さんは中高生のクラスにいきました。母親は今回で2回目というのでファイルを捜しましたが見つからなかったので新しい用紙に名前と母国名を書いてもらいました。名前はHさん。ペルーから来たという。簡単な日本語が通じたので質問から始めることにしました。やはり、一番関心があるのは食べ物ではと勝手に決め込んで、「日本で一番好きな食べ物何ですか」と振ってみたら意外と「サシミデス」と返ってきました。外国人は生魚は食べないとの認識が強く張り付いていたので軽いカルチャショックを受けてしまいました。最もペルーには移民で渡った日系人が大勢いるから、刺身文化も根付いているのかもと理解することにしました。なんの魚が好きですかと深堀してみたが魚の名前までは分からないのか黙してしまった。次「にラーメンが好きです」と返答してくれました。今やラーメンは世界的な食べ物に上り詰めたのではないかと思うくらいに受け入れられている。特にインスタントラーメンはお湯を注ぐだけでいつでも食べられる点が重宝されてる気がする。エベレスト登頂に持ってゆくと記事で読んだのを想い出した。
 テキスト本に「魚は塩辛いですと」書いてあったので、スペイン語で書いてもらうとどんどん食べ物の語彙が広がってきた。しょっぱいはsalado,ついでに甘いのはdulce,酸っぱいはagria。なんだか彼女に教えてもらうスペイン語が好きになってきた。もしかして英語より馴染みやすいかもと難しい気がしなくなってきて、これならできかもと不思議な自信が湧いてきた。
 さらに、私はyo,お父さんpapa,お母さんmama おねいさんhermana,おにいさhermano,おじいさんabuelo,おばあさんabuela,とドンドン書いていくうちに彼女の笑顔が増えていくのがはっきりとみえてきた。曇りがちだったのでスペイン語を教えてもらったのだ。一方的に日本語を押し付けるのではお互い息がつまりそうになってきたから。学習者の母語を学ぶことでお互いに同じ位置に立てるような気がする。彼女は整った字を書くのでかなり日本語を書く練習はしているのではと認識した。まだトークがたどたどしいのでなかなか分かり合いないのが歯痒いかった。
 そんなところへ、Kさんが若い女の人を連れて来てくれた。見るからに若さにあふれていた。どう見ても高校生にしかみえなかった。蔵の街の活動に興味があって見学に来たという。名前と校名を書いてもらう。現役の高校2年生が来るとは初めてのことなので驚いた。ボランティア活動に興味があると笑顔で返してくれました。ボランティア活動に興味があるとは笑顔の中には固い鋼が潜んでいるのかもしれないと膨らませてみる。
 日本人の学習者と支援者はしっかりと固く結び合っていてとても声を掛けることができないほど隙間がなかった。多分、休憩時間を取らなかったのではないかと思う。N4の学習者は隣の部屋に移動しTさんの支援を受けていた。
 社会人クラスは熱の塊のような気がしてきた。(国母仁)