2025.8.7

第26回(2025年8月3日)開催報告

全体報告

 9時半開始の朝のミーティング。今日は朝から教室溢れんばかりの人が集まっています。
 先週も今週も出だしが良い!!スタッフの皆さん、学習者の皆さんに出来るだけ9時半開始の朝のミーティングに参加するように引き続き伝えてください。出だしが良くなっている一因は、情報提供や説明だけではなく、歌を歌うことや紙芝居などみんなで楽しめることを行っているからかもしれません。本日も強力なTTコンビの音頭で「手のひらを太陽に」を皆で合唱。大半の人が歌詞もメロディーも覚えてくれたようです。ふと、「前を向いて歩こう」を最近歌っていないことを思い出す。4年前に作ったこの仮の校歌(作詞:田巻松雄)を、様々な節目で歌ってきました。今度はこの歌をしっかりと覚えてもらい、皆で歌いたいな!と思いました。
 会場の近くでライブハウスを営むMさんが見学に来てくれました。サックス持参と聞いていたので、とにかく何か演奏を!と何度も頼んだ結果、1曲披露してくれました。突然のお願いで失礼しました。でも、皆さん生演奏を大いに楽しんでいたと思います。

 さて、とちぎ蔵の街自主夜間中学は昨年10月に「とちぎに夜間中学をつくり育てる会」と栃木市国際交流協会の共催でスタートしましたが、現在、栃木市国際交流協会主催、「とちぎに夜間中学をつくり育てる会」協力という形に変わりました。この形の変更に伴い、運営委員会を発足させることになりました。とちぎ蔵の街自主夜間中学が円滑かつ適切に運営されるため、見識を有する者から広く意見聴収し関係機関と連携を図られることを目的とするもので、自主夜間中学の運営に関することや関係諸団体との連絡、調整に関することを協議していきます。委員は、栃木市国際交流協会会長、「とちぎに夜間中学をつくり育てる会」代表、栃木県立とちぎ学びの夢学園校長、栃木市の国際交流協会所管部署の担当者、栃木市教育委員会から推薦された者、「とちぎに夜間中学をつくり育てる会」から推薦された者、栃木市国際交流協会から推薦された者から構成されます。
 実は本日(2025年8月7日)夜に第一回目の委員会が開催されます。このような委員会が立ち上がったことを大変嬉しく思っています。自主夜間中学の運営や自主夜間中学と関係諸団体との連携などについて官民で協議するような場は全国的に見てもほとんどありません。この運営委員会での建設的な情報・意見交換が自主夜間中学の充実や関係諸団体との連携強化につながることを確信しています。「実は」をもう一つ。「とちぎに夜間中学をつくり育てる会」が最初の自主夜間中学を宇都宮に開校したのは2021年8月8日です。明日がとちぎ自主夜間中学開校4周年記念日なのです。このようなタイミングで、とちぎ蔵の街自主夜間中学の開催報告を書いていることに不思議な思いがこみ上げてきています。(田巻松雄)

小学生クラス

 〇今回の小学生クラスの活動では、食紅を使った色水の科学実験と、「寿限無」チャレンジをやりました。科学実験に取り組む子ども達にはワクワクが溢れ、「実験最高!」と楽しそうにしている姿が見られました。「寿限無」チャレンジでは、「寿限無」のとても長い名前を、一生懸命声に出して読もうと頑張っていました。活動の最後には、参加者全員の前で「寿限無」の音読を披露し、子ども達の達成感に満ちた様子を見ることができました。(石川かほ子)

〇じっけん!ジッケン!!
 リバネス無償貸与の科学教育プログラム第2弾は「中空糸膜」。(教材の詳細は以下のリンクをご覧ください。)
https://ed.lne.st/2023/06/01/toray_kyozai2023/(2023年度募集時のもの)
 いろいろな液体を膜でろ過して、できあがった液体と、もとの液体との色や匂いの違いを観察します。
 まずはスタッフが用意した2つの茶色っぽい水のろ過から。
 一つは薄いけど茶色のままで、もう一つは黄緑色になりました。
 次は(中空糸膜に関係ないけど)、食紅でつくった赤・青・黄の色水を混ぜて、どんな色ができるか予想+観察です。紫、オレンジ、緑の水ができました。最後はぜんぶ混ぜて緑がかった茶色になりましたね。
 その後の観察では、食紅から作った色水はぜんぶ、中空糸膜を通り抜けたようです。
 お終いは、オレンジサイダー。みなさん、どうなったと思います?
 調整がつけば、小学生たちがみなさんの前で実演いたします。
 小学生たちといっしょに、「どうなるとおもう?」「どうなった?」「どうしてだとおもう?」をご体験ください。乞うご期待!! (Y)

中高生クラス

  〇授業開始から約1時間後、ひとりの女子中学生が教室に加わりました。彼女はネパール出身です。前回の記録に基づき、正負の数の足し算から取り組んでもらうと、基本的なルールは理解している様子でした。ただ、少し複雑になると計算ミスが見られ、もう少し練習問題を重ねる必要があると感じました。
 その後、彼女が持参した漢字ドリルに取り組んでもらうと、力強く、そして読みやすい印象的な字を書いていました。一方で、書いている二字熟語の意味については、説明されると「へぇ」と反応はするものの、あまり関心がない様子。無心に「書くこと」そのものを楽しんでいたのかもしれません。
 授業の終盤には、他の中学生やスタッフも加わり、5人でトランプの神経衰弱をしました。彼女はニセ情報で場をかく乱するなど、ユーモアと工夫を交えながら場を盛り上げてくれました。ただ、本当はもっと身体を動かすようなゲームをしたかったようです。
 今回の授業を通して改めて感じたのは、「意味を理解すること」の重要性です。正負の計算も、漢字の書き取りも、意味がわからないまま機械的に取り組んでいると、学習意欲は湧かず、記憶にも残りません。「なぜだろう?」と疑問に思い、すでに知っていることと結びつけて「そういうことか!」と腑に落ちる瞬間(いわゆるアハ体験)があると、学びは楽しいものになります。
 しかし、彼女は身体を動かすことが好きで、熟考が苦手な様子。そのような生徒に対して、どれだけ興味の入口をつくっていけるかが、今後の課題だと感じました。いずれにしても、2時間の授業に1時間遅刻されてしまっては、できることにも限界があります。次回は、できるだけ遅れずに参加するよう促しました。(古川容子)

 〇中高生クラスの学習者はあと二人いました。一人は先週に引き続き参加したネパール出身の中学2年女子生徒で、もう一人はフィリピン出身で初参加の中学1年男子生徒でした。
 ネパールの中学2年生は、前回学んだ「正の数、負の数」の復習をしたあと、「正と負の数」が混合した計算に取り組みました。応援スタッフは、前回と同様、蔵の街などの自主夜間中学で応援経験が豊富な方と蔵の街が今回で3回目となる方のペアでした。「蔵の街」の中高生クラスで出会ったスタッフ二人が、これまでの経歴の違いを越えて、学習者に適した教材について語り合い、協力して数学の学習応援にあたる姿に私は魅かれるものがありました。古川さんのご報告にあった、二人が学習者とともにトランプで神経衰弱に加わったのも、そうした魅かれる活動の一環ではないかと感じました。
 フィリピン出身の中学1年生は、初参加でしたので、私ともう一人のスタッフの二名で学習者情報の作成から始めました。学習者情報とは、スタッフがまず学習者に、名前、連絡先(電話やEmailアドレスなど)、国、母語を聞くものです。小学生や中高生なら学校名と学年を、社会人なら職業を尋ね、年齢も聞きます。その上で、勉強したい(学びたい)ことを聞くことになります。この学習上の問いは、今後の学習活動や学習計画にとって大変重要な意味をもちます。スタッフは、細心の注意を払いながら学習者から希望を引き出したり、聞き取ったりする時間です。初対面なので、分からないことが多く緊張しますが、やりがいのある活動でもあります。学習や心身のことで特記事項があれば、記載して配慮します。
 スタッフ二名がこの中学1年生に勉強したい教科を聞いたところ、国語、理科、歴史と分かりました。また、三角形の内角(の和)に関しても質問があるようで、算数や数学にも関心を示していました。英語が堪能であることも確認しました。やはり漢字が難しいようです。こうした学習上のやりとりをしている中で、もう一人のスタッフが中学校の教科書が教材として有用であることを示唆してくれました。問題集とは異なり、教科書にはなぜそうなるかの説明や解説があるからというのが主な理由です。そのとおりだと思いました。そこで、栃木市国際交流協会の方に相談をして、図書室から中学校の教科書(理科、歴史、国語)をお借りして、最新の教科書の内容や構成、特徴などを確認することにしました。この段階で、大学教員のスタッフも加わり、中学校で使っている理科の教科書を学習者といっしょに確認してもらいました。理科の教科書も進化していて難しいようで、「探求」という概念が前面に出てきていて、この「探求」は大学生にとっても大変であるとのことでした。私もこの教科書を見てみました。教科書の冒頭には、「探求のとびらを開いてみよう」 Open your door to science! とありました。分野も生命、地球、物質、エネルギーという現代的な4つの用語により提示構成されています。夢を感じ、理科や科学の世界を探求したくなりました。なお、国語と歴史については、限られた時間の中で中学での学習状況や今後学習すべき点(例えば、漢字)を大学院生の方に確認していただきました。スタッフの方々に感謝します。
 今の教科書はとてもよくできています。今後は、教材研究をした上で教科書を活用して、学習者といっしょに学びを楽しみたいと思います。(佐々木一隆)

社会人クラス

 〇私は、私と同年配(団塊の世代)の日本人女性の応援をしています。自主夜間中学発足当時から休まず通っていらっしゃる方です。
 今日は、まず「小学校で習った漢字」を30分位。二人して読めなかったり、間違って記憶していたりで、お互い大いに勉強になりました。
 いつもは、中学3年の国語を中心に学習していますが、今日は教科書で紹介されている森鴎外の「高瀬舟」を音読しました。少しハードルが高いかなと思いましたが、時間内に読了。学習者は人生経験も豊かで、内容を深く理解する力があり、びっくりです。感想を話し合っているうちに2時間があっという間に過ぎ、共に学ぶ楽しさを実感しました。
 振り返りのミーティングでのTさんの「じゅけむ、じゅげむ」の読み聞かせは、本当に面白かったです。小学生の学習者達が前に出て唱和したのに感動! 元気で頼もしい子供たちですね。 (齋藤惠子)

 〇8月3日の社会人の出席者は12人です。
 ネパール人5人、日本人1、インド人1、タイ1、中国人1、スリランカ人1、パキスタン人1、フィリピン人1。とバラエティに富んでいました。支援者は27人。 
 これが本来の自主夜間中学のような気がいたしました。学びたい人が国籍問わず集ってくるのは意義深いことだと思います。
 全体のミーティング会場で突然、サックスのチョコレートのような甘い香りの演奏が流れ出してきて、ライブ会場に生まれかわったような雰囲気に包まれてしまいました。サックスの甘いチョコの香りが緩やかに皮膚に突き刺さってきて、圧倒されてしまいました。このまま演奏が永遠に終わらないで欲しいとふと思いました。多様な人々が集い新しい夜間中学の始まりの気がしました。
 次は、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみです。
 サックスの甘いチョコの香りの演奏が抜けきらない中、学習支援にうつりました。
 今回もネパール人のNさんの支援をしました。ひらがなのあかさたなからはじめて、なのところで、ウナギの単語が出てきました。ウナギがどんな魚なのか、分からないので英語と日本語で説明しても判ってもらえず苦慮しました。「ロング、ロング、ブラックフィッシュ」とブロウクン英語と手振りで奮闘しても、納得してもらうことは出来なかったので力不足を感じました。
 「に」のところにはにんにくの単語がでてきました。直ぐに分かったのか、「美味しいね」と親指と人差し指でオッケーのサインを出しました。にんにくは世界共通の食べ物と認識しました。
 「ほ」のところでホタルがでてきました。スマホで検索して、ホタルの飛んでる光景をみせても無反応でした。ホタルは日本だけに存在してる昆虫なのかそれともNさんが興味が無いだけなのか真相は藪の中に迷い混んでしまいました。
 「ふ」のところでたいふうが出てきて直ぐに分かったのか「あぁ、たいふうね」と指を丸めました。台風は国際的に認知されてると思うと誇らしく思いました。
 前の席には2人のネパール人の女性が学習していました。2人の苗字はシェルパさんです。学びに来ているネパール人の人にはシェルパの苗字が多いので不思議に思いNさんに訊ねてみました。彼は、カタコトの日本語で説明してくれました。要約すると、エベレスト山の登山者の荷物を担ぐひとをシェルパと教えてくれました。シェルパと名乗っている人達はその末裔ではと受け止め、彼女達も同じ地域ではと勝手に納得しました。
 いつの間にか、ネパール人同士で会話始めてしまいました。彼らの話し声に郷愁を感じました。故郷の匂いもしてきました。何故か、戦後、復興からたちあがった日本人の力強さを彼らから嗅ぐことができました。また、復興から立ち上がるには出稼ぎの人達の存在を忘れる事できないと思います。彼らも、ネパールの復興に寄与するために日本にやってきたのではと思います。敗戦後立ち上がった日本人と彼らがどうしても重なってしまうのはどうしてなのかわからない。(国母仁)

 ※ 以下の記事は、5/25開催報告の追記です。
 プログラミングをいじって機械を動かしてみよう。
 小中高生向けに、科学教育プログラムを提供している「リバネス」という会社から、課題解決型ものづくりに取り組める教材を無償でお借りすることができました。(このプログラムの詳細は、末尾のリンクを参照してください。)
 今回、蔵の街校では課題解決型学習まではたどり着けませんでしたが、「ノーコードでプログラミングをして機械を動かす」とはどういうものか、学習者のみなさんに紹介することができました。(スタッフ自身も、「プログラム言語を使わずにプログラミングする」ってどういうものか、具体的に知ることができました。自分でプログラミングすること自体、初めて。すこしだけ時代に追いつきました。笑。)
 高校受験時の志望理由に「大学に進学してプログラミングを学び、エンジニアになりたい。」と書いていた学習者もいたので、とてもよい例示ができました。
 今、あらゆる家電には〈センサー(目や耳などの役割)〉〈マイクロコンピュータ(頭脳の役割)〉〈駆動系(手足などの役割)〉が組み込まれています。日常生活の中のプログラムの役割の大きさを身近に感じられたひとときとなりました。
 《ものづくり0.》webサイトリンク
 https://go.lne.st/l/66312/2023-08-29/2hvgkwk