2025.7.24

第24回(2025年7月20日)開催報告

全体報告

 第24回を迎えた7月20日の学習者は、小学生クラス5人、中高生クラス3人、社会人クラス9人の計17人が参加しました。初めて見学に来た方も2人いました。応援スタッフは20数人の参加がありました。今回は私(佐々木)が、司会進行役を務めたこともあり、朝と振り返りのミーティングに焦点を当てて全体報告します。

〇和やかな多様な学びの場:交流と居場所の心地よさも改めて実感

 朝のミーティングでは、見学者の方に簡単な自己紹介をお願いし、久しぶりに参加した応援スタッフの方には近況報告をお願いしました。そのあと交流活動として、前回までの土屋さんのご尽力と皆さんのご協力により歌い終えた「手のひらを太陽に」を、今回は戸井田さんが音頭をとり歌詞を1番に限定して、国籍や年齢を超えた学習者と応援スタッフみんなで歌いました。準備段階でホワイトボードに歌詞を書き(写真1)、歌う前にご持参の笛で歌い始めのキーの高さを(他のスタッフに確認しながら)調整をした上で、みんな日本語で合唱しました。和やかな雰囲気の中にもある種の連帯感・一体感を感じました。歌の交流後は、初めての参加者のために3つの教室の位置や学習時間を紹介しました。こうした基本情報や公立夜間中学の説明会、本自主夜間中学の今後の開催日程やシンポジウム開催の予告などは、応援スタッフがあらかじめホワイトボードに書いておくことがあり、学習者だけでなく応援スタッフにとっても有益な情報の提供と共有の場となっています。
 振り返り(おわり)のミーティングでは、辻義夫さんによるマジック(てじな)がとても印象的でした(写真2)。トランプのカードを数枚重ねたものにフロアから借りた千円札を帯状に巻きつけて、その千円札を何か平たいもので切ってしまうという、見ている人をハッとさせるマジックで、その札が見事に元に戻り拍手喝采を浴びるというものでした。辻さんのことば遣いや所作がその場の和やかさを生み、ネパールの小学生たち数名が手品をしている辻さんの足元まで思わず近寄って座り(すなわち、かぶりつきに座って)じっと手品に見入りました。(何かが)見えたなどの一言もあり、会場は笑いの渦となりました。
 最後に、朝と振り返りのミーティングではないのですが、学習活動の合間に取った写真がありますのでご紹介します(写真3)。3名のうち両脇の生徒たちは現在県内の高校1年生で、昨年度にこの蔵の街自主夜間中学でも学習をしていました。高校進学後は蔵の街に来ることはほぼなかったのですが、嬉しいことに、7月20日に久しぶりに参加してくれました。一方、中ほどにいる方は今回の見学者の一人で、栃木市教育委員会で日本語指導サポーターをされているそうで、二人が中学生の時に日本語指導をしていたと伺いました。
 不思議な縁を感じるとともに、蔵の街が3名の方々にとって新たな学習と交流の場、居場 所になることを切に願っています。(佐々木一隆)

小学生クラス

 前回の続きでお店屋さんごっこのために、麻紐でブレスレット、折り紙で風船を作成しました。どのように販売するか話し合い、厚紙でレジを作成するところまで行い、終了となりました。わからないことは聞きあい、友達同士で協力しながら、楽しんで作業している様子でした。集中が維持できる時間がそれぞれ違ったので、スタッフ間ではその点を意識しながら、都度休憩しました。(写真4)(小松遊)

中高生クラス

 今日は、夜間中学初参加となるネパール出身の中学1年生の方を担当しました。学習内容としては、ひらがな・カタカナの読み書きと、日常で使う挨拶やものの名前を主として取り組んで行きました。学習者さんの様子としては、初めは緊張していたものの、学習を進め、コミュニケーションを取っていくうちに徐々に表情が柔らかくなりました。ひらがなの書き方については、「わ」「れ」「ね」の形の違いで質問があったものの、こちらの説明を踏まえて練習をし、違いを理解できたようでした。休憩時間には、ネパールの美味しい料理"モモ"について教えてもらい、お昼前だったこともあってよりお腹が減ってしまいました!(写真5)(小堀夏樹)

社会人クラス

 学習参加者は9人です。日本人 2人 ネパール人 3人 インド人 1人 中国人 1人 アフガニスタン人 1人 タイ人 1人で、社会人は毎回10人前後が参加者してくれています。
 今回、アフガニスタンの男性とタイの女性が遅れて来てくれました。アフガニスタンの男性はかなり遅れて2時間目からのスタートです。年齢は30代半ばではと察します。一人で座っていたので気になり声を掛けてみました。
 「誰か先生はいますか」
 「○○先生」と頑なな尖った目で返してくれました。初めての教室なので緊張しているのではと察しました。アフガニスタンは内戦状態の後タリバンが支配して未だに混迷が続いている状態です。尖った目はアフガニスタンの混迷の状態をものがたっているように捉えることにしました。
 タイの女性は笑顔に溢れていて直ぐに名前を用紙に書いてくれました。快活で陽気な南国のイメージが伝わってきて、日本語を学びたいと言う前向きな姿勢が笑顔に表れていました。日本語を学んで仕事に役立たせたいのか、それとも日常生活の会話に幅を広げてエンジョイしたのか、いずれにしても日本語を学ぶ以外にないのではと強く支援したいと思いました。
 インド人のNさんは毎回参加しています。かなり日本語が上達してきているのがちょっとした会話から読み取れます。前回支援した時に積極的に質問してきたので熱が入り休憩時間もとらずに2時間があっという間に過ぎてしまいました。彼は疲れてくると、「電車にのって大平町のアパートに帰ります」と口にします。余程、アパートに帰るのが嬉しいのではと感じとることができました。アパートに帰ると同国の仲間や友達が待っているから心が安らぐのかもと察しました。
 日本の女性は2時間目から別室に移動していきました。彼女も休むことなく参加しています。漢字が解らないので読めるようになりたいとポジティブ思考に支援者も逆に学ぶことを教えられている気が致します。
 日本人の男性はひたすら英語に取り組んでいます。どうしてそんなに英語を学びたいのか何か強い思いがあってのことではと深堀したくなりました。例えば1人娘さんがアメリカ人と結婚して孫に会いに行くために必死で学んでいるとか。それとも仕事に少しでも役立たせたくなってのことなのかといくらでも膨らませてみることはできます。彼の真摯さに心打たれます。
 今回も前回支援したネパール人のSさんを支援することになりました。彼は兄弟で参加しています。まだ、ひらがなを読んだり書いたりできる程度なのでしっかりと読み書きができるように復習から始めました。彼は30代の半ばと思われますがまるで小学生のように素直に声を出してひらがなを読み上げていき、今度はノートに書いていきました。日本の挨拶が掲載されている教本を使い学びました。「おはようございます。こんにちは。いってきます。いってらっしゃい」という挨拶は理解したのですが、「おじゃまします。いらつしゃい」はスマホで検索しても英語にはないのか掲載されてなかったので、なかなか理解してもらうことができず身振りや手振りで何とか理解してもらうことができました。日本語ばかり学習していると飽きと疲労が溜まってくるのでネパール語で挨拶の言葉を書いてもらいました。彼に書き順を教えてもらいネパール語に挑戦してみました。まるで古文書の崩し字のようにくねくねと曲がっているのでうまく書くことができなかったのですが、何回か書いているうちに書けるようになりネパール語に親近感を覚えました。彼らが日本語を学ぶことの困難さが少し理解することができ有意義なひと時でした。授業が終わってから」「今度は先生にネパール語を教えてやるから」と笑顔で声を掛けてくれました。今度は彼が先生です。笑顔にはエベレスト山のような矜持が潜んでいるように映りました。
 教室の入口付近でひたすら学びの世界に溶け込んでいるのは中国人の女性。彼女も毎回参加しています。毎回遅れてやってきます。多分仕事の関係で遅れるのではとポジティブにとらえています。毎回参加しているので学びたいと言う想いがシンプルに伝わってきます。
 社会人の教室に来るのは30代から40代です。みんな働き盛りばかりのひと達です。毎回彼らの学ぶ意欲がビシビシ伝わってきます。日本語を学ぶことは生きると言うことに直結していると思います。日本語を学んでスーパやデパートで好きなものが買いたいですと口にした学習者を思い出しました。蔵の街の自主夜間中学にはたくさんの夢が転がっているような気がします。(写真6)(国母仁)

写真1 全体ミーティング
ホワイトボードに交流活動の歌詞(佐々木)

写真2 全体ミーティング
マジックを通した交流活動(佐々木)

写真3 学習活動の合間
学習活動の合間(佐々木)

写真4 小学生クラス
お店屋さんごっこ(小松)

写真5 中高生クラス
ひらがな・カタカナ、挨拶など(小堀)

写真6 社会人クラス
9人の学習状況(国母)